この腕時計は、30年以上私の左手首と一緒に生活をしてきた。今まで故障した事が無い。一緒に仕事で世界一周もした仲だ。多少、時が進むときがあるが元気が良かった。先日、この時計を落としてしまった。昨日から秒針が止まったり、動いたりして不安定になっている。ヨドバシカメラにある時計修理所に持って行って修理が出来るかどうかを打診したら、古い腕時計であるので時計のカタログにも掲載されていないため直ぐには分からないと言われた。
一緒に私の人生を過ごしてくれている腕時計には情が移る。私が他界する時は、家内への形見の品としたいと思っていた。私の身の回りにあるもので30年以上も使い続けているものは少ない!30年前の価格が1万円前後であった。
この腕時計が完全に動かなくなったら、そのままにして新しい腕時計を買う事にしている。
愛着があるものは手放さない!
人間誰しも長年使い慣れている物に愛着を持つ。腕時計のほかに持ち続けて時たま使っているバックル皮ベルトがある。私が米国の州立大学に留学した時にホームステイ先の奥さんからクリスマスプレゼントで頂いたベルトだ。40年前になる。今、ジーンズのベルトとして使っている。
ヒューストン、テキサス州のホストファミリー先であったので牛の刺繍が付いたバックルである。
もう、こんなバックル皮ベルトなんて使っている人はいないだろう。私を除いては。愛着と情が移っているものは手放なせない。
他人が見ても何の価値も見出さない物であっても本人にとっては過去の記憶を伝えるタイムカプセルである。あと、ソニーに入社して最初に海外出張で香港に行った時、キャセイパシフィック航空のビジネスクラスキャビンでアテンダントから頂いたモンブランのインク式ボールペンがある。そのボールペンには、こんな文字が書かれていた。
"Arrive in better shape!"(快適な体調で到着!)
今も使っている。インクだけ取り換えられるからだ。物にはその時の記憶が記録されている。私の家内は、一緒に旅行をする時、旅行先で必ずその旅行を思い出す物を買う。買った物で過去の記憶をとどめている。自分の人生を振り返る時に古い物があると思い出しやすい!
20歳代の若者よりも60歳代のシニアの方が思い出深い。今回のCASIO STINGの腕時計には、こんなエピソードがある。今もはっきりと覚えている。初めて米国ソニー本社(ニュージャージー州)に出張した時に宿泊したマリオットホテルでの出来事だ。ホテル内にある売店で絵葉書を探していた。売店の若い女性店員が私の腕時計を見てこう言ったのだ。
"I like your watch. It looks very expensive and nice. Mine is TIMEX, very cheap and NO Good!"(あなたの腕時計、いいわね~!高級そうで見栄えが良いわ。私のはタイメックス製ですごく安い物よ。全然良くないの!)
それ以来、この腕時計は私のとって特別な物になった。私の人生とともに時を刻んでくれている。誰にでも自分だけの宝物があるはずだ。他人にとってみれば、ガラクタだが自分にとっては宝物だ。そんな宝物には自分の人生の一部が記録されている。
今にも死にそうなCASIO STINGの腕時計は、時を刻むことをやめても私の宝物であるのは変わらない。動かなくなたら大事に宝物の引き出しに入れておく。